食事と栄養が歯に与える影響
最近では健康意識の高まりにより「何を食べるか」「何が適切な栄養か」といった、食事に気をつける方が非常に増えています。当院にもそういった栄養相談に来る方がおられます。食べ物が変わると私たちの身体にどのような影響があるのでしょうか。
歯科医師ウエストン・プライス博士の調査
ウエストン・プライス博士の著書『食生活と身体の退化』によると、食べ物が変わると骨格、歯、健康全体に影響が出ることが記録されています。
プライス博士がアラスカ、アマゾン、オーストラリア、ヨーロッパ、南太平洋などの伝統的な部族社会(近代文明から孤立した集団)の方々を対象に健康調査をしたところ、彼らには虫歯、歯周病、退行性疾患がほとんどなかったそうです。ところが、西洋近代文明がもたらした精製した小麦、砂糖、農薬、添加物などが彼らの生活の中に入ってきた途端に虫歯、歯周病などの病気が急激に出てきたそうです。
なぜこのような結果になったのか、プライス博士は「取るべき栄養素の欠乏」つまり【食品として本来含むべきある種の栄養素が不足している】のではないかと仮説を立て、この仮説を検証するために«数千品目の伝統食の栄養成分»を分析し現代西洋食と比較を行いました。
その結果、伝統食は現代栄養食よりミネラルと水溶性ビタミンが約4倍ほど高く、脂溶性ビタミンは10倍程高い、といった結果が出たそうです。
歯や口腔内への影響
歯や口腔内に焦点を当てて考えてみます。先ほどの栄養の中でも、特にミネラルはphや体内の浸透圧を調節する大切な栄養素です。口腔内のphは最低でも6.5、常に7前後を保つことが望ましいと言われています。ph5.5以下になると歯の表面のエナメル質が溶け出し、身体は骨を溶かし始めて、血中カルシウムのバランスを取ろうとします。この現象(脱ミネラル化)が進むと、骨密度低下、骨粗鬆症にまでなり、顎の骨が溶けると歯周病にもなります。
栄養価の高い伝統食を食べていた部族の人々は、身体や口腔内のphを適正な範囲に保つことができたため、虫歯や歯周病、その他の病気になることが少なかったのではないかと思います。
食べ物と栄養は歯に関係ないと思っている方は、今一度考えを改めてみるのも良いと思いませんか?